購入以来、それはもう指紋の跡が消える暇が無いほど、むしろ俺の指紋が消えちまうんじゃないかと思うくらい触りまくってるiPhoneですが、最高です。
バッテリーもとりあえず普段の会社往復の間は持つようだしアプリは楽しいしとりあえず生活圏ではwi-fiか3Gのどちらかは拾えるし余りに楽しいのでアプリ開発したくなって金無いのに真剣にMacBookの購入を検討し始めたりしてるわけです。

で、ですね。なんか、単純に外でウェブに繋がるとか、iPodと電話が一緒になったとか、そういう個々の具体的な機能についてとは、まったく別の次元のワクワク感を、iPhoneを触るたんびに感じるんですよ。

だって不思議じゃないですか?
あの愛想の無い、ともすれば上下間違えてスリープボタン押せなかったりするのっぺらぼうなデザインのクセに、ひとたびロック解除すれば触る撫ぜる傾ける音が出る話す震える表示する移動する、と、あらゆる手段でのインターフェイスが提供されていて、およそコンピュータに出来そうな事ならいつ何時でも反応してくれる。
それなのに電源切れば、ほとんどただの板。
このギャップにスゲエワクワクするんです。


そのワクワク感の正体が今日分かりました。気づきました。
iPhoneって東京探偵団に出てきた「CJカード」を現実にしてしまったんだな、と。

東京探偵団ってのは「ギャラリーフェイク」や古くは「さすがの猿飛」「GU-GUガンモ」の作者の細野不二彦が書いていた、ホモの少年と守銭奴の少女とマゾの少年で構成される探偵事務所が超巨大財閥の金の力を後ろ盾にホモの中年が起こす事件を金の力で解決するという内容の傑作マンガです。
wikipediaによると連載は'85-'87年ですので、当時自分は小6くらいで読んでたんでしょうか。

そのマンガの中で、探偵団の一人が落とした探偵団専用のスペシャルクレジットカード「CJカード」を貧しい家出兄妹が拾う、という話があるのですが、そこで描かれるカードの機能がとにかく凄いんですよ。
クレジットカードとして勿論最強。何しろ日本に10枚と無い超スペシャルカード。限度額無限。取り出した瞬間即VIP待遇。
そして、ここが大事なのですが、一見ただのクレジットカードなのに、ちょっとカードの端を触って操作すると、音楽が聴ける、ファミコンが出来る、ショッピングも出来る、テレカにもなる、位置情報も確認できる、お父さんに会いたいとカードに話しかければ、居場所を音声で答えてくれる。なんだか分からないくらいハイテクな色々が詰め込まれた超高機能カード。
このエピソードの肝は、ただのカードなのに、家出兄妹の希望を次から次へと叶えていくという、そのファンタジーにあったと思います。そこで描かれていたものは、まさに「魔法のカード」でした。子供心に凄く憧れ、何度も読み返したことを今でも覚えています。


そして20年が過ぎ、iPhoneが今、手の中にあります。
ゲーム、音楽、電話。加速度センサー、GPS、そしてマルチタッチディスプレイ...。20年前のマンガに登場したファンタジー、子供だった当時の自分が憧れた魔法のほとんどが、この板状の小さいボディに実現されています。これは、ワクワクせざるを得ませんよね。

子供の頃のそんな記憶を思い出しながら、ぼーっと黒いiPhoneを眺めていると、これって本当「魔法のカード」と呼ぶにふさわしい代物だと思えてきてしまいます。そりゃカードと呼ぶには少々分厚くて大雑把ですが、少なくとも、電話の受話器から発展してきた携帯電話のデザインと比べて強いてどちらかといえば、間違いなくカードでしょう。

ぱっと見は何も出来なさそうなのに、ちょっと触るだけで万能的に要求に答えてくれるという感覚。
これは、10キーのついた受話器の末裔たちからは絶対に感じ取ることの出来ない、特別な快楽なんじゃないかな、と思います。